橋本多佳子句集「海彦」 発掘
発掘
炎天の平城宮址に立ちて
人声よりきちきち勁し宮址掘る
[やぶちゃん注:「宮址」は以下も概ね「ぐうし」と音読みしている模様。]
炎天の礎石に老眼鏡(らうがん)発掘者
風化刻々宮址の溝にぎす鳴きて
野の鶉灼くる宮址の赤土(はに)に来ず
宮址発掘す傍観の日傘の影
埴輪出土炎天に歓喜のこゑ短く
埴輪出づ舐むるばかりに土愛(かな)し
宮址の寂螇蚸押へし指を嚙む
[やぶちゃん注:「寂」は「じやく」であろう。「螇蚸」は「ばつた(バッタ)」。]
昏れて秋風宮址の窪より起る
[やぶちゃん注:この句は「くれてあき かぜ/みやあとの くぼよりおこる」と読むか。識者の御教授を乞う。]
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