――芭蕉枕邊―― 降る音や耳も酸う成る梅の雨
降る音や耳も酸う成る梅の雨
(ふるおとやみみもすうなるうめのあめ)
――寛文七(一六六七)年――芭蕉二十三歳――
……梅雨時の、あの饐えたような気だるき気配を笑い飛ばすように……この病いも蠅をはらうようにお飛ばし下され…………
[やぶちゃん注:「耳も酸う成る」というのは、現在の「耳が酸っぱくなるほど」と同じ当時の俗語で、同じことを何度も聴いて飽きるの意である。それに文字通り、梅のなれば「酸」は道理と洒落たもので、まさにそうしたきゅと「酸」を「利」かせた貞門調の諧謔句である。]