杉田久女句集 307 杉田久女句集未収録作品 ⅩⅢ 大正八年(1)
大正八(一九一九)年
髷重きうなじ伏せ縫ふ春着かな
新年
注連かけて屋根なき井戸やお降す
[やぶちゃん注:「お降」は「おさがり」で、元日に雨や雪が降ること又はその樋をいう新年の季語。]
あみの餠番する子等や初烏
[やぶちゃん注:個人的に好きな句である。]
雪搔いて雜煮菜掘りしところかな
晴衣かけて松の内なる衣桁かな
[やぶちゃん注:着物を掛けておく衣紋掛けを指す「衣桁」は「いかう(いこう)」「えかう(えこう)」と二様に読める。「晴衣」(Haregi)「かけて」(kakete)「かな」(kana)のカ行音及び母音「e」音の有機的連続の心地よさから私は「えこう」と読みたい。]
水仙に至りし雪の齒あと哉
かきまぜてまだぬるき湯や寒の入り
短日の雀に閉めて夕餉かな
壁によせて布團寒げに寢る婢かな
あたへたる足袋を婢がつぐ爐べりかな
大河豚の腹横たへし俎上かな
竈たくや石の如落つ凍て雀
料理人來て冬木根に竈すゑにけり
鴨料る庖丁鋭く血を戀へり
[やぶちゃん注:久女真骨頂の鬼趣句。こういうのは他の女流が真似ても、彼女の句ほどの鬼気は生じぬと私は感ずる。それほどに久女の「鬼」には熱い「血」が感ぜられる。]
活け殘りし水仙つけて甕久し
石鹼玉小さく破れたる疊かな
[やぶちゃん注:タルコフスキイに撮らせたい。]
靑天衝て春めく枝の光りかな
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