杉田久女句集 326 杉田久女句集未収録作品 ⅩⅩⅩⅡ 昭和十二年(全)
昭和十二(一九三七)年
筆とればしづかにたのし塗火鉢
圓山應擧墨繪
金屛の蛟竜雲に乘ずべく
[やぶちゃん注:重文の丸山応挙の「雲龍図屏風」(安永二(一七七三)年作・東寺観智院伝来)か?]
山樂源氏物語屛風
爭へる牛車も宮も春がすみ
[やぶちゃん注:重文の狩野山楽の「車争図屏風」(四曲一隻・紙本着色・江戸時代十七世紀作・東京国立博物館蔵)であろう。九条家の「源氏の間」の襖絵を屏風に仕立てたもので、「源氏物語」「葵」の帖の知られた「車争い」のシーンを材としたもの(リンク先は国立博物館公式サイトの同屏風図)。]
淸朝ひすい香爐
春怨の王妃がゆめをまのあたり
信貴山緣起繪卷
百獸の戲畫おもしろしことに秋
[やぶちゃん注:国宝で奈良県生駒郡平群町の朝護孫子寺蔵で現在、奈良博物館寄託の「信貴山縁起絵巻」(リンク先は平群町公式サイト内)。]
今たのし雉子の玉子草にあり
雉子の雌(め)のぬくめゐたりしこの玉子
愛しけれきぎすの玉子手にとりて
押しとほす俳句嫌ひの靑田風
虛子ぎらひかな女嫌ひのひとへ帶
[やぶちゃん注:同年十月の『俳句研究』に載った「靑田風」十句の内の二句。徹底した「虛子嫌ひ」の私の偏愛する二句である。]
一人寢の水色蚊帳に夢淸き
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