日本その日その日 E.S.モース(石川欣一訳) 第十六章 長崎と鹿児島とへ 船上にて――奇岩と島影
図―542
図―543
翌朝夙く起きて、長崎へ近づくのを見た。水上に岬や、岸を離れた小さな島々が、怪奇な形をとって現れる有様は、如何にも不思議だった。岸ほはすべて山が多く、そして丘や山の殆ど全部は頂上まで段々畑になっている。水平的な畑にある玉蜀黍(とうもろこし)や、小麦や、稲の農作物が、あらゆる方角に見える。それ等すべての新奇さと美しさとは、言語に絶している。図542は長崎から十六マイル離れた所にある、奇妙な突出物の一で、高さ百五十フィートである。中央に狭い口があり、それに発する間際はてっぺん迄達している。図543に示すものは、より遠くにあり、海図には高さ二百五十フィートと記載してある。
[やぶちゃん注:図542は角力灘(すもうなだ)にある大角力(これが島の名)である。長崎市三重町三重商工会公式サイトのこちらページの「海と空を黄金色に染める角力灘の落日は最高にロマンチック」とキャプションのある写真で確認されたい。私は修学旅行の引率で一度長崎に行ったきりで、土地勘が全くないので二つ目は自信がないのであるが、幾つかのネット画像を見る限り、西彼杵郡外海町(にしそのぎぐんそとめちょう)に属する蟇島(ひきしま)別名、沖ノ島か? 池島の南西三キロメートルにあって大蟇島と小蟇島(陸続き)からなる無人島である。
「十六マイル」二五・七五キロメートル。
「百五十フィート」四五・七二メートル。大角島の高さはネット情報では約五十メートルとある。
「二百五十フィート」七六・二メートル。国土地理院の地図を見ると、大蟇島の最高点は七十八メートルで近い。]
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