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2014/12/30

橋本多佳子句集「海彦」  冬 枯崖 / 東大寺二月堂 / 狐 唐招提寺

 

 枯崖

 

  師誓子及び三鬼・暮石両氏に訪はれて

  会はず 一句

 

留守を来てわが枯崖を如何に見し

 

[やぶちゃん注:「枯崖」「かれがけ」と読むか。冬枯れした崖の謂いで、聴き馴れぬ語ながらしっくりとはくる。ネット検索では、

 一茎の鶏頭枯崖しりぞけつ  野澤節子

 枯崖の下あるときは愛し合ひ 吉田三枝子

の用例を見出せる。]

 

  飛火野荘(志賀直哉旧居)天狼同人会

 

直哉きゝし冬夜の筧この高さに

 

[やぶちゃん注:「飛火野荘」旧志賀直哉邸。奈良市高畑町にあり、この前年の昭和二八(一九五三)年より厚生省厚生年金宿泊所「飛火野荘」として使用されていた(昭和五三(一九七八)年まで)。現在は奈良文化女子短期大学セミナーハウス内「旧志賀直哉邸」として復元されている(学校法人奈良学園公式サイト内の志賀直哉旧居」に詳しい)。]

 

寒き壁と遊ぶボールをうち反し

 

相うつは凍(い)つるや解くるや氷と波

 

綿虫飛ぶ天光の寵暮るるとも

 

風邪の髪解けざるところ解かず巻く

 

風邪の身に漢薬麝香しみにけり

 

黄八丈の冷たさおのがからだ冷ゆ

風花や葱が主(おも)な荷主婦かへる

           (二十九年)

 

 東大寺三月堂

 

同じ寒さ乞食の身より銭鳴り落つ

 

仏寒しわめける天邪鬼に寄る

 

天邪鬼木枯しゆうしゆう突く音(ね)立て

 

凍てゆくなべ壊れやまざる吉祥天女

 

虎落笛書祥天女離れざる

 

[やぶちゃん注:「虎落笛」老婆心乍ら、「もがりぶえ」と読む。冬の激しい風が竹垣や柵などに吹きつけて発する笛のような音。]

 

 狐

 

狐飼はれてたゞに餌を欲る愛しさは

 

地を掘り掘る狐隠せしもの失ひ

 

狐舎を守る髪に狐臭が浸みとほり

 

われに向く狐が細し入日光

 

狐臭燦狐にはまる鉄格子

 

[やぶちゃん注:特異な表現句である。「こしう/さん//きつねにはまる//てつがうし」(こしゅう/さん//きつねにはまる//てつごうし)と読むか。「燦」は通常は視覚上の鮮やかに輝くさまをいうが、それをむっとする獣の臭いに響かせるのは面白い。個人的に欲を言うと「狐臭燦狐に嵌(はま)る鉄格子」とガッしと固めて見たい気はする。]

 

詩をしるす鉛筆狐きゝもらさず

 

 唐招提寺

 

白羽子に息かけ童女斜視(すがめ)になる

 

独楽舐るいま地に鞭うちゐしを

 

独楽舐る鉄輪(かなわ)の匂ひわれも知る

 

溝乾く伽藍凩絶間あり

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