日本その日その日 E.S.モース(石川欣一訳) 第十六章 長崎と鹿児島とへ 最初のドレッジ
五月十三日。我々は素晴しい曳網をやった。我々の舟の乗組は、男二人と女一人とであるが、この女も男と同様力強く櫓を押した。この附近では、女が石炭を運んだり、船に荷を積込んだり、舟を漕いだり、男のやる仕事をすべてする。私の眼は、絶えず曳網から雄大な景色――水ぎわから頂上まで欝蒼たる樹木に被われた高い丘にかこまれた長い入江、木木にかくれた小さな家、寺、神社、それ等に通ずる石段――の方に向うので、現に行いつつある仕事に注意を集中することは、容易でなかった。私は曳網で、熱帯性の貝や、棘皮動物や、甲殻類や、その他私には物珍しい種類を引上げつつあったのだが、而もこのような美しい眺望から眼を離して、曳網の泥土に頭をつっこんでいるということは、困難だった。
午後我々は湾の岸に沿って、干潮時の採集を行い、大きな石をひっくり返しては貝類の興味ある「種」を沢山採った。この努力に加わった舟子たちは、あだかもしょっ中採集をやっていたかの如く振舞った。採集家でなくては、彼にとって全然新しい、珍稀な熱帯性の見をひろい上げることが、如何に愉快であるかは、見当もつかない。我々は暗くなる迄仕事を続け、強い追風に吹かれて帰った。明日は今日より大きな舟に、漕手四人を乗り込ませ、湾内数マイルの所まで出て行くことにした。
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