杉田久女句集 319 杉田久女句集未収録作品 ⅩⅩⅤ 昭和五年(全)
昭和五年
蘆嫩芽むら立つ中にかゞみけり
[やぶちゃん注:「蘆」は底本では「芦」。老婆心乍ら、「嫩芽」は「わかめ」で若か芽。]
春蘭や雨をふくみて薄みどり
[やぶちゃん注:「春蘭」単子葉植物綱クサスギカズラ目ラン科セッコク亜科シュンラン連Cymbidiinae 亜連シュンラン Cymbidium goeringii 。本邦では各地で普通に見られる野生蘭の一種。グーグル画像検索「Cymbidium goeringii」。]
杜若さげ來し君と業平忌
[やぶちゃん注:元慶四年五月二十八日(八八〇年七月九日)に享年五十六で亡くなったとされ、晩年を過ごしたと伝える京大原野の十輪寺ではこの五月二十八日を業平の忌日としてが法要が営まれる。]
露凝れば垣夕顏の閉ぢあへず
伐りはらふ軒のひろ菓や居待月
英彦山にて
雲海にさ丹づらふ日や秋の蕃
[やぶちゃん注:底本では「さ丹づらふ」の「丹」の右に編者による『(ママ)』注記があるが、何故か意味が分からない。これで問題ないからである。「さ丹づらふ」は「さ丹頰ふ(さにつらふ)」で、赤みを帯びて美しく映えている、ほの赤いの意の万葉以来の上代語。接頭語「さ」+名詞「丹(に)」+名詞「頰(つら)」+動詞を作る接尾語「ふ」で、原義は「赤い頰をしている」の意。そこから「色」「君」「妹(いも)」「紐(ひも)」「もみぢ」などを形容する言葉として多彩に用いられ、枕詞とする辞書も多い。]
山腹の町に下りきぬ秋の暮
枯蔦を誘てこぼるるむかごかな
[やぶちゃん注:「誘て」は何と読んでいるか? 私は「をびきて(おびきて)」と一応訓じたいと思う。]
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