杉田久女句集 320 杉田久女句集未収録作品 ⅩⅩⅥ 昭和六年(全)
昭和六年
娘にゆづる櫛笄や花の春
塀ぎはに萌えし蕨をそだてけり
むすびやる娘の春帶は板の如
[やぶちゃん注:二句前のものと併せ、長女昌子さんであろう。この年、二十歳成人式であった。]
木蓮や人來り去る井のほとり
木蓮の花影あびて去りがたく
竹たてて百合根の上をふまじとぞ
はねつるべ菖蒲の水の上り下り
たもとほる女誰々ぞ濃紫陽花
[やぶちゃん注:老婆心乍ら、「たもとほる」はラ行四段活用の自動詞で、同じところを行ったり来たりする、歩き回る。徘徊る。「た」は接頭語で「もとほる」は巡る、回るの意の上代の動詞。]
星の竹病む娘のホ句も吊り添ゆれ
囮籠かけゐる人を木影より
秋耕の古鍬の柄をすげにけり
干鰯見てゐる欄も夕づけり
すでにして簀子の鰯夕づけり
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