石膏となる少女の夢
今朝方、こんな夢を見た……
*
僕はパソコンに向って、芥川龍之介の「澄江堂遺珠」の原資料を懸命に打っている。
しかしそれは芥川龍之介の詩篇という意識ではなく、僕自身の詩篇ででもあるかのように、私は私の意志によってそれらの詩篇に何度も手を加えては、消去し、また、打ち直しているのである。
ふと――僕のすぐ脇を見ると、そこには毛布に包まった一人の娘が寝息を立てているのである。
それを見ると、何か僕も無性に眠気を覚えだして、その傍らにやはり横になった。
横になったなり、毛布越しにその娘の顔を覗き見てみると、それは三十三年も昔、僕が初めて担任となった時の、懐かしい生徒の一人――その時の姿形のまま――なのであった。
僕はそっと手を伸ばすと、その眠っている娘の頬に指先を触れた――
すると――
その少女は一瞬にして石膏の生き人形に変貌してしまったのであった……
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