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2015/01/25

やぶちゃん版「澄江堂遺珠」関係原資料集成Ⅵ ■4 推定「第三號册子」(Ⅶ) 頁25~頁36

《頁25》

ひとり葉卷をすひ居れば

雪は幽かにつもるなり

かかるゆうべはきみもまた

かなしきひともかかる夜は

ひとり幽かにいねよかし

 

ひとり葉卷をすひをれば

雪は幽かにつもるなり

かかるゆうべはきみも亦

ひとり幽かにいねよかし

 

ひとり葉卷をすひ居れば

雪は幽かにつもるなり

       かかる夜は

かなしきひとも

       夜となれば

幽かにひとりいねよかし

 

《頁26》

綠はくらき楢の葉に

晝の光の沈むとき

わが欲念

わが欲念はひとすぢに

をんなを得むと

ふと眼に見ゆる

君が心

 

光は

何かはふとも口ごもりし

その

 

みどりはくらき楢の葉に

ひるの光のしづむとき

わがきみが心のおとろへを

ふとわが

 

《頁27》

ひとり

雪は幽かにつもるなり

きみも今宵はひややかに

ひとりいねよと祈りつゝ

幽かに雪のつもる夜は

ひとりココアを啜りけり胡桃を剝きにけり

きみも今宵はひややかに

ひとり寐ねよと祈りつつ

 

[やぶちゃん注:「剝」の漢字は底本の用字。以下同じ。]

 

幽かに雪のつもる夜は

ひとり胡桃を剝きにけり

君もこよひは冷やかに

ひとりいねよと祈りつつ

幽かに夜をおほへかし

 

        ひとづまも

 

幽かにひとりひとねいねよし

 

《頁28》

幽かに雪のつもる夜は

ひとり胡桃を剝きゐたり

こよひは君も冷やかに

ひとりいねよと祈りつつ

 

君の

 

幽かに雪のつもる夜は

折り焚く柴もつきやすし

きみも

幽かにひとりいねよかし

小夜床に

ひとりいねよと

 

《頁29》

幽かに雪はつもれかし

ひとなみだ

幽かにひとりいねよかし

 

幽かに雪のつもる夜は

折り焚く柴もつきやすし

 

幽かにこよひは

 

ひとり

 

こよひは君もひややかに

ひとりいねよと祈りつつ

 

[やぶちゃん注:ここに編者によって、『以下、欄外・横書き』と注がある。以下の「{」「}」は底本では一つに繋がった大きなもの。都合三パートに附くが、最後の二行は下方の閉括弧がない。]

Ibsen     Doll's House,      

Strindberg     Dol1's House 

de L’Isle  Adam    Revolt  }

 

Positive         

Negative      }

Positive but pess.

不公平

economical independence

suffragists

 

[やぶちゃん注:「Strindberg」何故ここでヨハン・アウグスト・ストリンドベリ(sv-August Strindberg.ogg Johan August Strindberg)の後に、またイプセンの「人形の家」が再度メモされているのかは不明。

de L’Isle Adam    Revolt」の「de LIsle Adam」はフランスの象徴主義の作家ジャン=マリ=マティアス=フィリップ=オーギュスト・ド・ヴィリエ・ド・リラダン(Jean-Marie-Mathias-Philippe-Auguste, comte de Villiers de l'Isle-Adam)の名で、「Revolt」は彼の一幕物の戯曲「La Révolte」(「反逆」一八七〇年作)の題名の英語表記。イプセンの「人形の家」(一八七九年作)と同系列の作品であるが、こちらの方が早い。

pess.」この単語のみ、最後にピリオドがあるから、pessimisticの省略形かと思われる。

economical independence」メモの流れから言うと「経済的自立」か。

suffragistssuffragist(婦人参政権論者)の複数形。]

 

《頁30》

幽かに雪のつもる夜は

君も幽かに眠れかいねよかし

ひとり

 

しら雪に夕ぐれ竹のしなひかな

君もかなしき小夜床に

ひとり

 

しら雪も

幽かに今はつもれかし

きみもこ

幽かにひとり 今はひとりいねよかし

 

《頁31》

幽かに

かかる 雪のかかるゆうべはきみもまた

幽かにひとりいねよかし

 

幽かに君はいね

 

幽かに雪もつもれかし

君もかかるゆうべはきみもまた

 

《頁32》

雪のゆうべとなりぬれば

幽かに今はのぼれかし

 

ひと

ゆうべとなればしら雪も

幽かに窓をおほへかし

さては

ゆうべかなしき

 

ゆきのゆうべとなりぬれば

幽かに君もいねよかし

 

幽かにひとりいねよかし

 

《頁33》

ひとり

雪はかそかにつもるなり

きみもこよひはひややかに

ひとりいねよと祈るなり

 

幽かに雪のつもる夜は

折り焚く柴もつきやすし

「思ふはとほきひとの上」

幽かにひとりいねてがな

 

幽かに雪のつもる夜は

折り焚く柴もつきやすし

きみもこよひは

幽かにひとりいねよかし

かなしきひとをおもほへば

雪も幽か

 

《頁34》

ゆきの夕は

 

こよひはとほきば人◆◆◆◆◆◆◆も

幽かにひとりいねよかし

 

[やぶちゃん注:「◆◆◆◆◆◆◆」の箇所には編者によって『この部分破損』とある。(七字分であるかどうかは不詳)。]

 

かなしき

 

かなしきひともかかる夜は

かそかにひとりいねよかし

 

《頁35》

ゆうべとなれば草花は

しつかに

 

みどりは暗き芭蕉葉に

水にのぞめる家あまた

杏竹桃

 

[やぶちゃん注:「杏竹桃」はママ。この誤字については「澄江堂遺珠」の「巻尾に」で神代種亮が言及している。]

 

ひとも幽かにねてあらむ

 

みづから才をたのめども

心弱きぞ

ひとを戀

君があたりの萩さけば

心しどろとなりにけり

 

《頁36》

妬し妬しと

嵐は襲ふ松山に

松の叫ぶも興ありや

山はなだるる嵐雲

松をゆするもおもしろし興ありや

人を殺せどなほ飽かぬ

妬み心をもつ身には

妬み心になやみつつ

嵐の谷を行く身に

 

雲はなだるる峯々に

■■

昔めきたる竹むら多き瀟湘に

昔めきたる雨きけど

 

嵐は襲ふ松山に

松のさけぶも興ありや

妬し妬しと

峽をひとり行く身には

 

人を殺せどなほ飽かぬ

妬み心も今ぞ知る も知るときは

山にふとなだるる嵐雲

松をゆするも興ありや

 

[やぶちゃん注:「■■」は編者によって『二字不明』とある。

「瀟湘」湖南省長沙一帯の地域の景勝地の呼称で、特に洞庭湖とそこに流れ入る瀟水と湘江の合流する附近を指す。中国では古くから風光明媚な水郷地帯として知られ、「瀟湘八景」と称して中国山水画の伝統的な画題となった。因みに、この画題の流行が本邦にも及び、金沢八景や「湘南」の語を生んだ。

実はこの頁は自筆原稿が「澄江堂遺珠」の裏表紙見返し(右頁)で視認出来る。そこでは、

 

 

   妬し妬しと

   嵐は襲ふ松山に

   松の叫ぶも興ありや

   山はなだるる嵐雲

   松をゆするもおもしろし興ありや

   人を殺せどなほ飽かぬ

   妬み心をもつ身には

   妬み心になやみつつ

   嵐の谷を行く身に

 

   雲はなだるる峯々に

   生贄

   昔めきたる竹むら多き瀟湘に

   昔めきたる雨きけど

 

[やぶちゃん注:ここで下段にシフトしている。]

 

      嵐は襲ふ松山に

      松のさけぶも興ありや

      妬し妬しと

      峽をひとり行く身には

 

      人を殺せどなほ飽かぬ

      妬み心も今ぞ知る も知るときは

      山にふとなだるる嵐雲

      松をゆするも興ありや

 

《頁36》では「■■」抹消部分は『二字不明』とあるが、私には「生贄」と書いて抹消したかのように見える。また、下段の最初の「嵐は襲ふ松山に/松のさけぶも興ありや/妬し妬しと/峽をひとり行く身には」は《頁36》稿では生きているが、明らかに一気に斜線を三本も引いて全体抹消していることが明らかである。特に後者は不審である。]

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