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2015/01/05

生物學講話 丘淺次郎 第十二章 戀愛(9) 四 歌と踊り(Ⅰ)

     四 歌と踊

Tenagazaru

[手長猿]

[やぶちゃん注:本図は国立国会図書館蔵の原本(同図書館「近代デジタルライブラリー」内)の画像からトリミングし、やや明るく補正した。底本の図より細部が観察出来るのでこちらを採用した。]

 

 動物の中で巧みに歌を歌ふものは鳥類と蟲類とであるが、その他にも多少歌ふものは幾らもある。獸類では手長猿などが調子を十一段にも上下して恰も音階を練習する如くに歌ふ。蛙の類が喧しく鳴くことは人の知る通りであるが、熱帶地方では樹の枝で「とかげ」の類がなかなかよく歌ふ。かやうに歌ふものは隨分澤山あるが、それがいづれも雄だけであることを考へると、その生殖の働と何らかの關係を有するものなることが、始から察せらるる。

[やぶちゃん注:「手長猿」サル目真猿亜目狭鼻下目ヒト上科テナガザル科テナガザル属Hylobates に属する九種。ウィキの「テナガザル」によれば、『東南アジア地域では熱帯雨林、アジア本土では半落葉性モンスーン林』を中心として棲息し、『インド東端を西限、中国最南端を北限とし、バングラデシュ ・ミャンマー・インドシナ半島を経て、マレー半島からスマトラ島、ジャワ島西部、ボルネオ島に至る地域』に分布するとある。『千年ほど前には黄河以北にも生息していたことが中国の文献に記載されている』ともある。『ほとんどの種では』頭胴長 四五~六五センチメートル、体重五・五~六・七キログラム(但し、フクロテナガザル Hylobates syndactylus は有意に大きく頭胴長七五~九〇センチメートル、体重は凡そ一〇・五キログラムに達する)。『樹上生活者であり、長い腕で「枝わたり」(ブラキエーション)をして林冠を移動して生活する』。一夫一妻で、子供を含めた四頭ほどの群れを形成する。母親は通常二~三年毎に一頭の子供を産み、子は生後凡そ六年ほどを経て性成熟し、八年目を迎える頃までに社会的にも成熟して、『それまでに群れを出て行っていなければ家族集団からの離脱が父親によってうながされる』とある。以下、本文と関わる「歌」の項。『テナガザルは歌を歌うことで知られている。主にカップルのオスとメスが交互に叫びあいながら、複雑なフレーズを取り混ぜたデュエットを行うのである。頻度は』一日二回から五日で一回というように、『種や社会的状況によっても異なる。縄張りの境界で集団が出会ったときなどは』、一回の平均歌唱継続時間が三十五分と『非常に激しくなる。この歌は家族間の絆を深めたり、他の群れに対してなわばりを主張したりすることに役立っていると考えられる』。『この歌い方は、種によってそれぞれ特色があるため、歌を聞き分けることにより、種の判別が可能である』とある。彼らの歌については「生命誌ジャーナル」2006年夏号の京都大学霊長類研究所正高信男氏のテナガザルの歌からことばの起源を探るがよい。「歌」もちゃんと聴けるのが嬉しい!

『樹の枝で「とかげ」の類がなかなかよく歌ふ』ヤモリ属の模式種である爬虫綱有鱗目トカゲ亜目ヤモリ下目ヤモリ科ヤモリ亜科ヤモリ属トッケイヤモリ Gekko gecko を指しているように思われる。別名オオヤモリ、トッケイとも呼ぶ。参照したウィキの「トッケイヤモリ」によれば、インド・インドネシア・カンボジア・タイ・中華人民共和国南部・ネパール・バングラデシュ・フィリピン・ベトナム・マレーシア・ミャンマー・ラオスに分布し、全長は二五~三五センチメートルと大きく、頭部は上から見ると大型の三角形を成す。背面は細かい鱗で被われているが、やや大型の鱗が中に混じる。体色は淡青色で、橙色の斑点が入る個体が多いが、個体変異や地域変異がある。斑点が尾では帯状になる。森林や民家の近くに生息する。食性は動物食で、昆虫・クモ・ヤモリ・小型哺乳類などを摂餌する。繁殖形態は卵生で一回に二~三個の卵を産む。地域によっては本種の鳴き声を七回連続で聞くと幸福が訪れるという言い伝えがあるところもある。ペットとして飼育されることもあるが、顎の力が強い上に歯が鋭く、気性も荒いため、思わぬ怪我をすることもあるので取り扱う場合は注意が必要である。学名・英名(Tokay gecko)は鳴き声に由来する。ウィキのリンク先で驚きのその声を聴くことが出来る。マジ! 必聴! また、本邦のヤモリの中でも南西諸島の種には鳴くものが結構いるようである(沖縄言葉(うちなーぐち)では「やーるー」と呼ぶ)。宮古島在住の「さんごのたまご」さんのブログに写真入りで「ケケケケケケケ」と鳴く旨の記載がある。女性の方の個人サイト「たびかがみ」の「【解説】ヤモリという虫」によれば、本邦には少なくとも十四種以上が棲息すると考えられ、その中に鳴くことに由来すると思われるタヤモリ亜科ナキヤモリ属 Hemidactylus があり、以下の同属の二種を掲げておられる(一部データや情報を「国立環境研究所」その他のそれと差し替えさせて戴いた)。

シロヤモリ Hemidactylus bowringii

分布は奄美諸島・沖縄諸島・宮古諸島・八重山諸島に分布するとされるほか、台湾・東南アジアなどに棲息。人家付近で夜間照明に集まり、昆虫を食べること以外には生態は殆ど知られていない。全長は九〇~一二〇ミリメートルで暗い場所で見ると明瞭な横帯が現れて見え、一見「虎柄」のように見える。一部のネット記載には殆んど鳴かないともある。

ホオグロヤモリ Hemidactylus frenatus

原産地ははっきりしないが分布は奄美諸島・沖縄諸島・大東諸島・先島諸島のほぼ全ての有人島および小笠原諸島で人為的な移入による外来種であり、世界的分布域は大陸の内陸部を除く熱帯・亜熱帯域広範に及ぶ。民家などの建造物を好み、かなりの密度で棲息し、逆に人里から有意に離れた自然林内ではあまりみられない。「ケケケ」又は「チッ、チッ」と鳴き、灯りに集まり虫などを摂餌する。全長は九〇~一三〇ミリメートルで南西諸島では最も普通にみられるヤモリである。

 私の愛する宮古島に赴任した俳人篠原鳳作の句に、

守宮啼くこだまぞ古き機屋かな

という句があるが、これらから見るに、鳳作の聴いた「こだま」するほど吃驚したそれは、後者ホオグロヤモリ Hemidactylus frenatus の可能性が高いように思われる。南洋系と思われる種を突いて鳴かせている動画も幾つかあるが、何となくいじめているようで不快であるからリンクしない。しかしかなり大きな声で高い鳴き声で鳴く。]

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