芥川龍之介 或阿呆の一生 三十七 越 し 人
三十七 越 し 人
彼は彼と才力(さいりよく)の上にも格鬪出來る女に遭遇した。が、「越し人(びと)」等の抒情詩を作り、僅かにこの危機を脱出した。それは何か木の幹に凍(こゞ)つた、かゞやかしい雪を落すやうに切ない心もちのするものだつた。
風に舞ひたるすげ笠(がさ)の
何かは道に落ちざらん
わが名はいかで惜しむべき
惜しむは君が名のみとよ。
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