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2015/01/11

耳嚢 巻之九 鯉煮ようの事 / 蚫和らか煮の事 (二話)

 鯉煮ようの事

 

 鯉は、枝ある骨多くして食するに煩しかりけるを、或人かたりけるは、蜆(しじみ)の貝内の紫なるを鯉一本に三つ程入(いれ)て、味噌汁にて煮へる程に煮てさて眞那板(まないた)の上へ取出し置候得(おきさふらえ)ば、上へ骨顯(あらは)れ候を毛貫にて拔(ぬき)とり、扨赤味噌にて本途(ほんと)に鹽梅(あんばい)して煮る由。

 

□やぶちゃん注

○前項連関:なし。久々の調理法シリーズ煮方編。現行の調理法に、このようなものは発見出来なかった。カルシウムが溶け出して、ということになろうが、果たして? 専門家の御教授を乞うものである。

・「蜆の貝内の紫なる」斧足綱マルスダレガイ目シジミ科シジミ属 Corbicula の内、本邦産(一属七種/保育社昭和三四(一九五九)年刊・吉良図鑑)の中で一般的な種は以下の三種で、ここでいう「紫なる」とはシジミ(この場合、強い紫色という点からマシジミ Corbicula leana と(京阪ならばセタシジミ Corbicula sandai でもよい)の、まるまるの殻一個を「三つ」という謂いである。

●ヤマトシジミ Corbicula japonica

 全国の汽水砂泥底に棲息。雌雄異体卵生。殻長は三〇~三五ミリメートル。以下の二種に比すと、殻が有意に前後に長く、殻頂が小さい。殻の内面が白色であることを特徴とし、これで概ね識別が可能である。僅かに窩心部(殻頂内面部分)に紫または橙色が淡く染み出ている(稚貝の間はやや紫色をしているが、大きくなるにつれて白色となる)。本邦で食卓に供される種は殆んどがこれである。

●マシジミ Corbicula leana

 全国の淡水砂礫底や砂底に棲息(泥底は好まない傾向がある)。雌雄同体で卵胎生であるが、自身の精子の情報のみで発生する動物界では極めて稀な雄性発生を行う(但し、繁殖様式自体は十分に解明されていない)。殻長三〇~三五ミリメートル、時には四〇ミリメートルに達する個体もある。殻の内面は紫色をなす。北海道を除く、本邦全土に棲息していたが、業者の砂抜き作業後の排水の不用意な廃棄等によって外来種である本種に酷似した淡水産のタイワンシジミ Corbicula fluminea などが侵入拡大し、本種の棲息域を圧迫、棲息総数が激減して、通常の流通で本種を見かけることは非常に稀となってしまった。

●セタシジミ Corbicula sandai

 琵琶湖固有種の淡水種。水深十メートル以浅の砂礫底・砂泥底に棲息。寿命は七~八年ほどとされている。雌雄異体卵生。殻頂部が著しく膨大して高く秀でた三角形を呈するが、これはマシジミの特徴でもあり、両者の識別は素人には困難。殻の内面は藤色または濃紫色で、時に橙色や紅色も呈する。かつては瀬田川で多量に漁獲されたことからかく呼称するが、現在では瀬田川では殆んど獲れない。棲息総数が激減しているため、滋賀県は漁業者らと連携して種苗生産放流技術の開発・稚貝の生産・漁場放流・湖底耕耘と水草除去による放流漁場の環境改善活動を行ってはいる。かつて諏訪湖に移植を試みたことがあるが、繁殖しなかった。

 

■やぶちゃん現代語訳

 

 鯉の煮方の事

 

 鯉は、細かなる枝様(えだよう)の骨の多くして、食するに煩わしいもので御座るが、ある人の語って御座ったに――

一、蜆(しじみ)の、貝の内には紫色の部分が御座るが、あの紫の鮮やかなる貝殻を撰(えら)み、鯉一本につき、都合、蜆の貝殻三つほどを入れて、まず、味噌汁に致いて、ぐつぐつと煮えるほどにまで、煮るので御座る。

二、そのように下処理を致いた鯉を、さても俎板の上へと取り出しておいて御座れば、自ずと、鯉の体の表より、かの細かな骨々が、悉く、これ、皮を貫いて生えるように出でて参る。

三、されば、それを毛抜きにて抜き取るので御座る。

四、その上で、徐ろに赤味噌にて本格的に普段通り、調味塩梅致いて煮れば、これ、よろしゅう御座る。

 

 

 蚫和らか煮の事

 

 蚫(あはび)を和らかに煮るに品々の法あれど、貝をはなし、こしきの内、湯の不附(つかざる)樣にして蒸し候て、さて鹽梅(あんばい)醬油を以(もつて)煮れば、和らか成(なる)こと綿の如しと、水野氏傳授なり。

 

□やぶちゃん注

○前項連関:調理工夫煮方編二連発。

・「こしき」厳密には弥生時代以降に米・豆などを蒸すのに用いた道具で、底に数個の湯気を通す小穴を開けた深鉢形の土器で、別に湯を沸かした釜を用意し、その上に載せて用いる。奈良時代頃からは木製のものも現れたが、後に円形や方形の木製蒸籠(せいろう)にとって代わられた。ここは蒸籠と同義である。

・「水野氏」これより前の直近話柄を調べると「水野」姓では耳嚢 巻之八 すあまの事に水野若狭守忠通(ただゆき)がいる。彼は根岸の情報源と考えてよく、根岸より十歳年下で「氏」とするのも納得がゆく。

 

■やぶちゃん現代語訳

 

 鮑の柔らか煮の事

 

 あの硬き鮑を柔らかに煮るには、各種の手段工夫のあれど、

――貝殻より身を剥き離したものを、蒸籠(せいろ)の内に、串や箸を差し渡したる上などに静かに置くなど致いて、決して沸騰せる湯の、直接に鮑の身につかざるように成した上、徐ろに蒸し成し、さても、それより普通通りの塩梅や醬油を以ってして煮れば、柔らかになること、これ、綿の如し。

 と、これは水野氏よりの伝授で御座った。

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