やぶちゃん版「澄江堂遺珠」関係原資料集成Ⅵ ■4 推定「第三號册子」(Ⅸ) 頁39~頁41
《頁39》
畫舫はゆるる水明り
はるけき人をおもほへば
わがかかぶれるヘルメツト
白きばかりぞうつつなる
幽に雪のつ
幽にかに雪のつもる夜は
ひとりいねよと祈りけり
疑ひぶかきさがなれば
疑ふものは數おほし
薔薇に刺ある蛇蛇に舌
女ゆゑなる涙さへ
幽かに雪のつもる夜は
ひとり葉卷をくはへつつ
幽かに君も小夜床に
[やぶちゃん注:この頁も自筆原稿が「澄江堂遺珠」の表紙見返し(左頁)で視認出来る。そこでは、
畫舫はゆるる水明り
はるけき人をおもほへば
わがかかぶれるヘルメツト
白きばかりぞうつつなる
幽に雪のつ■■
幽にかに雪のつもる夜は
ひとりいねよと祈りけり
疑ひぶかきさがなれば
疑ふものは數おほし
薔薇に刺ある蛇蛇に舌
女ゆゑなる涙■さへ
幽かに雪のつもる夜は
ひとり葉卷をくはへつつ
幽かに君も小夜床に
《頁39》には私の判読不能箇所は存在しないことになっている。]
《頁40》
古き都に來て見れば
昔めきたる瀟湘の
夜雨
昔めきたる竹むらに
雨はしぶける夕まぐれ
夕さびしき大比叡は
雪
比叡もいつしか影たてぬ
雪のゆうべとなりにけり
み
《頁41》
上野の圖書館に幽靈が出るのは、毎夜一時と二時との間である。この間は何處の部屋も、悉電燈が消えされてゐる。が、幽靈はその暗い中にも、いくらまつ暗でも、決して滅多に躓いたり壁へぶつかつたり、階段をの昇降に躓いたりはしない。これは彼自身の體から、朦朧と絶えず放射する燐光が、モウロウと行く手にを照らしてくれするからである。幽靈
幽靈は
[やぶちゃん注:これは推測するに、芥川龍之介の怪談蒐集癖に基づくメモ書き或いは創作草稿と思われる。龍之介にはご存じのように怪奇談を採録集成した怪作「椒圖志異」があるが(リンク先は私の電子テクスト)、これは文体に龍之介の小説に特有な言い回しとリズムが認められ、口語表現で一貫している点、後者(創作物の草稿)の匂いが強い。]
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