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2015/02/03

耳嚢 巻之九 長收といへる地下人歌の事

 長收といへる地下人歌の事

 

 京都にて、地下(ぢげ)にて歌よみて名高き者の由。人のもとにて、扇に歌書(かき)しを見けるが、宗匠家(そうしやうけ)などにてはもちひもし玉(たま)はざらめ、餘りたくみなれど、面白しと思うふまゝ爰に記しぬ。

  田霜 露のいろも冬になるこの繩くちて結かへたるを田の朝霜

                           長 收

 

□やぶちゃん注

○前項連関:なし。面白狂歌シリーズ。

・「長收」「ちやうしう(ちょうしゅう)」と読む。国学者有賀長収(あるが/ありが ちょうしゅう 寛延三(一七五〇)年~文政元(一八一八)年)。名は長因、号は生志斎・居貞斎。父は歌人有賀長因、祖父は京の国学者で二条派(同派についてはウィキ二条派を参照されたい)の流れを汲む有賀長伯(彼は父が医家であるが後を継がず、歌学の道を選んだ)。父に従って大坂に移住、国学者加藤景範に師事して和歌を学ぶ。家集に「雲樹集」。有賀家は長伯から連綿と続いた歌学の家系であった(以上は主にこちらの頁を参照した)。

・「地下人」「ぢげにん(じげにん)」で一般農民や庶民。

・「露のいろも冬になるこの繩くちて結かへたるを田の朝霜」は、「田霜(たのしも)」という歌題で、

 露(つゆ)のいろも冬(ふゆ)になるこの繩(なは)くちて結(むすび)かへたるを田(だ)の朝霜(あさしも)

である。以下、和歌嫌いの私乍ら、オリジナルに注してみたい。

「露」「結ぶ」「朝」「霜」は縁語。

「なるこ」は「冬になる」「此(こ)の繩」と「鳴子(なるこ)」の掛詞。鳴子は、秋の稔りの頃から田畑の害獣や害鳥を追い払う目的で設置する農具で、数本の竹筒を小板に並べてぶら下げたものを、縦横に張った繩や竹竿などに吊るしおいて、風に揺らせたり、人が縄の端を引くなどして鳴らすもの。

「色」は様態・景色であるが、ここは若く美しい人の容姿を暗示させる。

「繩」は盛者必衰(冬のイメージ)の「名は朽ちて」という風に、「露」から直ちに連想される儚い「命」の遠心を掛けているに違いない。

「結(むすび)かへたる」は「結び代(變)へたる」で、先の縁語とは別に「繩」の縁で「結ぶ」が多重的に引き出され、次に「霜」が降りることを「結ぶ」と表現するところから、それに冬になって朽ち落ちてしまった結わえた繩の景に引っ掛けて、「繩を結ぶ」を「霜を結ぶ」と洒落た。死後(「朽ちて」)の結縁を秘かに願う気持ちを含むか。

「を田」は「小田」で「を」は微小辞或いは美称辞。

 

■やぶちゃん現代語訳

 

 有賀長収(あるがちょうしゅう)と申す地下(じげ)の者の作れる歌の事

 

 京都に於いて、地下の者ながら、歌を詠ますれば、これ、佳句を吟ずと名高き者の由。

 ある人の本にて、扇に歌を認(したた)めたと申すものを実見致いたことのあったが、まあ、所謂、正統なる和歌の宗匠家(そうしょうけ)などに於いては、凡そお採り上げにはならるるまいと思わるる趣きにて――申さば、あまりに技巧に走り過ぎて御座れど、しかし、それでも、これ、なかなかに面白う感じたるままに、ここに記しおくことと致す。

 

  田霜 露のいろも冬になるこの繩くちて結かへたるを田の朝霜

                           長 収

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