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2015/02/10

村 三好達治   附やぶちゃん授業ノート

 村   三好達治
鹿は角に麻繩をしばられて、暗い物置小屋にいれられてゐた。何も見えないところで、その靑い眼はすみ、きちんと風雅に坐つてゐた。芋が一つころがつてゐた。
そとでは櫻の花が散り、山の方から、ひとすぢそれを自轉車がしいていつた。
脊中を見せて、少女は藪を眺めてゐた。羽織の肩に、黑いリボンをとめて。



詩集「測量船」より。



以下、僕の授業ノートより。

・散文詩
◆作者の少年期の記憶の断片 ~ 郷愁 ~ 秘密めいたイメージ・カット
〇第1連(行末はショット・カウント)

 暗い物置の入り口、暗い内部へ。(フレーム・アップ) 
         ↓ 
 闇に浮かんでくる縛られた鹿。(フレーム・インして F.I./フルショット) 1
 その青い眼。(クロース・アップ) 2
 
 きちんと貴公子のように座っている鹿。(フル・ショット) 3
 土間に転がっている芋一つ。(クロース・アップ) 4―― F.O.
〇第2連
 
 空。桜の枝、少し。桜、舞う。(ミデイアム・ショット) 5
  ↓(ゆっくりティルト・ダウン)
 山の坂道。桜の花が道を埋めている。
 その中央を少しくねりながら、少年が運転する自転車がゆっくりと降りて行く。(自転車は画面下にフレーム・アウト)
  ↓(カメラ、暫くそのまま静止)  
  ↓(ゆっくりズーム・アップ)
 桜の花びらの中の自転車の轍。(クロース・アップ) 6

 竹藪。
  ↓(ゆっくりフレーム・ダウン)
 少女の黒いリボンを止めた羽織りの肩。うなじ。風に揺れる和毛。背。
 少女の肩は心なし、震えている。(藪を遠景にフレーム・インして、バスト・ショットで静止)
 

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