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2015/04/07

耳嚢 巻之十 前兆奇怪の事 /// 「耳嚢」全十巻1000話原文電子化附オリジナル訳注完遂!

 前兆奇怪の事

 

 大久保邊、大御番(おほごばん)組の同心石山某が妻、如何(いかが)の譯と申(まうす)事も是なく、深き井の内へ落入(おちい)りしが、山の手の井戸故(ゆゑ)至(いたつ)て深く、引上(ひきあげ)げ候ても存命無覺束(おぼつかな)けれども、とかうして是をあげけるが、怪我もせず、平生(へいぜい)の通(とほり)にてありしが、不思議なるは翌年其の月の時日もたがへず、頓死なしけるとなり。

 

□やぶちゃん注

○前項連関:なし。淡々とした奇怪なシンクロニティの実録の怪異譚である。私はまっこと、「耳嚢」掉尾に相応しい記事と感ずるものである。本当の怪異とは実はこうしたことにこそある。――私の母が病院亡くなった時刻私が自宅抱いて寝てい母の愛犬アリスが一声吠えたように。――因みに、「卷之十」の記載の推定下限は文化一一(一八一四)年六月で、作者根岸鎭衞は、これを書き終えた一年と五ヶ月後の翌文化十二年十一月四日(グレゴリオ暦一八一五年十二月四日)に没している。……掉尾なれば、訳にはこれ、ちょっとした悪戯を施しておいた。悪しからず。これぞ、私の勝手自在「耳嚢」現代語訳の最後で御座る!……さても遂に全十巻千話を終えた。二〇〇九年九月二十二日に開始し、当日、私はブログで『――しかし、余りに路は遠い――』と如何にもやり遂げることを想定していない、呆けた弱音を吐いていたが凡そ延べ五年と半年、二千二十三日後に、かく、全くオリジナルに完遂し得たのであった。――嗚呼、感慨無量也。謝しまする! 根岸鎭衞殿!!!!!!!!

・「大御番」既注

・「大久保」現在の新宿区東大久保・西大久保・大久保百人町(後に大字百人町。現行の大久保三丁目には百人町四丁目が含まれる)一帯の当時の広域呼称。

・「山の手の井戸」岩波の長谷川氏注に、『山の手は、江戸の高台地帯。本郷・小石川・牛込・四谷・赤坂・麻布辺。俗に山の手の井戸は深いという』とある。地勢的に納得出来る。

 

■やぶちゃん現代語訳

 

 前兆の奇怪なる事

 

 大久保辺、大御番(おおごばん)組の同心石山某が妻、如何なる訳かもこれ分からず乍ら、文化九年十一月四日のこと、深き井戸の内へ落ち入ったと申す。

 山の手の井戸なれば至って深く、引き上げ得たと致いても、これ、存命は覚束なし、と、者ども、口々に申したものの、ともかくも引き上げみたところが、身体、これ一向、怪我ものぅ、平生(へいぜい)と全く変わらず無事に助け出された。

 ところが……不思議なことに、翌年のこと、

――井戸に落ちたる

――その月その日

――文化十年十一月四日

――まさにその井戸に落ち入ったる

――その刻限

――これ

――一時も違(たが)えることのぅ

――この石山某の妻

――急死致いた

とのことで、御座った。……

 

 

 

耳 嚢 大尾

 

[やぶちゃん注:以上を以って底本本文は終わるが、その後に底本では根岸鎭衞自身「耳嚢」序文及び同跋文が示され、その後に吉見義方の「耳嚢」に寄せた識語がある。以下、同様に電子化して語注を附し、現代語訳を示す。また、その後には長谷川強氏校注になる岩波文庫版「耳嚢(下)」の末に配されてある志賀理斎の長大な識語(当該文庫本で二十三頁に及ぶ)も電子化したいと考えている。ともかくも本文完全オリジナル訳注を完結し得たのはこれ一重に教え子を始めとする読者の方々の不断の声援のお蔭である。この場を借りて深く謝意を表するものである。 二〇一五年四月七日朝 心朽窩主人藪野直史]

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