橋本多佳子句集「命終」 昭和三十二年 孫崎
孫崎
渦の迫門翅あれば鴉の翔けつづけ
[やぶちゃん注:「孫崎」は徳島県鳴門市鳴門町土佐泊浦(とさどまりうら)にある最北端の岬。東方に鳴門海峡を望む(山湯(さんゆ)っくんの個人サイト「四国のええとこ教えてあげ隊」の「孫崎灯台」が位置や景観を知るに最適である)。老婆心乍ら、「迫門」は「せと」と読む。]
渦潮に乗りゆく何の躊躇もなし
渦潮を乗り切るときに後退して
躊躇許さずはや舶を貴むる渦の潮
渦潮を脱せし船体白波敷き
荒鎌の刈り若布(め)を逸す疾潮に
[やぶちゃん注:「若布」の二字に「め」のルビが振られている。次の句も同じと読む。]
疾潮に逸せし刈り若布惜しと立つ
渦潮と落ちゆく舵輪いつぱいに

