弼馬温夢
僕は大陸の風吹き荒ぶ草原に立っている。――
僕は僕が「弼馬温(ひつばおん)」なのだと知っている――
[やぶちゃん注:「弼馬温」は「西遊記」で孫悟空が天界に於いて始めに玉帝から任ぜられた馬飼役としての名である。]
何頭もの馬を操っては野に放つのである――
最後に――風上から鬣を靡かせて栗毛の馬が一頭やって来る――
その轡(はみ/くつわ)を捉えて落ち着かせようとするのだが、その馬一頭だけはいうことをきかない――
遂には両の前脚を僕の頭上に揚げて棹立ちした――
僕はその瞬間――
「……この子に頭を蹴り潰されるな……」
と覚悟した――
……ところが……そこにどこからともなく大きな白い布が風に乗って飛んで来て……僕の頭に被さるのだった……
……すると……馬は両の蹄鉄を交互に……そのシーツの上から……僕の額に……優しくそっと
――コツ――コツ……
と降ろしたのだった……
*
今朝、そこで目が醒めたのだが……
醒めると同時に僕は、この夢の象徴的意味が……これ……すっかり分かったような気がしたのであった……
最後に――風上から鬣を靡かせて栗毛の馬が一頭やって来る――
その轡(はみ/くつわ)を捉えて落ち着かせようとするのだが、その馬一頭だけはいうことをきかない――
遂には両の前脚を僕の頭上に揚げて棹立ちした――
僕はその瞬間――
「……この子に頭を蹴り潰されるな……」
と覚悟した――
……ところが……そこにどこからともなく大きな白い布が風に乗って飛んで来て……僕の頭に被さるのだった……
……すると……馬は両の蹄鉄を交互に……そのシーツの上から……僕の額に……優しくそっと
――コツ――コツ……
と降ろしたのだった……
*
今朝、そこで目が醒めたのだが……
醒めると同時に僕は、この夢の象徴的意味が……これ……すっかり分かったような気がしたのであった……
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