尾形龜之助 「犬の影が私の心に寫つてゐる」 心朽窩主人・矢口七十七中文訳
犬の影が私の心に寫つてゐる
尾形龜之助
明るいけれども 暮れ方のやうなもののただよつてゐる一本のたての路
――
柳などが細々とうなだれて 遠くの空は蒼ざめたがらすのやうにさびしく
白い犬が一匹立ちすくんでゐる
おゝ これは砂糖のかたまりがぬるま湯の中でとけるやうに涙ぐましい
×
私は 雲の多い月夜の空をあはれなさけび聲を
あげて通る犬の群の影を見たことがある
[心朽窩主人注:最終連全体の字配は詩集「色ガラスの街」のそれを再現した(実際には三字下げで前の二連とは有意にポイント落ちであるが、ブログやSNSでは上手く表示できないので同ポイントとした。中文訳の改行は中国語の文字列として不自然にならない箇所で改行した。また、一行目の「たて」は原詩では傍点「ヽ」が附されてあるが、ブログやSNSでは表示が困難なため、ブログでは下線に、SNSでは【 】にした。但し、この傍点は平仮名表記の読み辛さを補填するために尾形が附したものと考えられるので、中文訳では無視してある。]
狗的影子映在我心中
作 尾形龟之助
译 心朽窝主人,矢口七十七
很明亮可是 飘着一丝薄暮那样的气氛的一条直路 ——
柳树细枝垂头丧气 遥远的天空好像苍白的玻璃一样地凄凉
白色的一条狗呆立不动
啊! 这情景令人心酸,仿佛方块糖在微温水里溶化似的……
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我 有一次看过发出令人怜悯的尖叫声的
狗群在挂月多云的天空上横穿过去的情景
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矢口七十七/摄