充血 村山槐多
充血
充血せる君 鬼薊
金と朱の日のうれしさよ
わめきうたへる街中に
金箔をぬるうれしさよ
派手に派手に血を充たせ
君が面に赤き血を
たとへ赤鬼の如く見ゆるとも
ひたすらに充血せよ
血と金の鬼薊
屋上に狂し
美しき街は暴虐たる王の
金箔にぬりつぶされたり
充血の君 鬼薊
血は滴たたれり
すゆき春の面に
壯麗なる街の上に。
[やぶちゃん注:「滴たたれり」「すゆき」はママ。「すゆき」は飲食物が腐って酸っぱくなるというヤ行下二段動詞「饐ゆ」(ワ行下二段「すう」の転じたもの)を形容詞化したものか?]