大和本草卷之十四 水蟲 介類 甲貝(テングニシ)
【和品】
甲貝 ニシニ似テナガシ大ナリ食シテ味美シ但性不益人
○やぶちゃんの書き下し文
【和品】
甲貝(カフカイ) 「ニシ」に似て、ながし。大なり。食して、味、美し。但し、性、人に益せず。
[やぶちゃん注:腹足綱前鰓亜綱新腹足目テングニシ科テングニシ Hemifusus tuba 。古え、数種の香料を練り合わせて作る練り香の素材の一つとして、一部の巻貝の蓋が好んで用いられ、それを一般名詞で「甲香(へなたり)」と呼んだが、このテングニシの蓋もその代表格とされている。例えば、私の電子テクスト「鎌倉攬勝考卷之十一附錄」の「六浦」の「産物」の項にある「甲香(カヒカフ)」を見られたい。そこに附図されているものはまさにテングニシである。
「性、人に益せず」根拠はない。そもそもが益軒が「和品」としているように、中国本草書で本種に近いものの肉の効能を見出し得ず(甲香相当のものはある)、従って薬効を記さなかった/記せなかったのではないかという感じがする。]