消えゆく性 村山槐多
消えゆく性
害はれし美しき性は
廢園にすすり泣けり
憫然たる涙もて
五月を染めたり
ああ美しき性は
汚れたる空に消えたり
薄紫に燒かれて
未練もなく消されたり
かくて害はれし性は
廢園にすすり泣けり
その涙のあはれさよ
豐かなる五月も空しく消されたり
(いかに哀れならずや
かく叫ぶその聲さへ)。
[やぶちゃん注:「全集」では最終連最終行に「かく叫ぶその聲さへ)。」と句点を打つ。冒頭で述べた通り、「全集」は概ね総ての韻文詩篇がこうなっているので、特異なケースを除き、この最終連最終行末の句点注は以下、原則、省略する。]