一本のガランス 村山槐多
一本のガランス
ためらふな、恥ぢるな
まつすぐにゆけ、
汝のガランスのチユーブをとつて
汝のパレツトに直角に突き出し
まつすぐにしぼれ
そのガランスをまつすぐに塗れ
生(き)のみに活々と塗れ
一本のガランスをつくせよ
空もガランスに塗れ
木もガランスに描け
草もガランスにかけ
□□をもガランスにて描き奉れ
神をもガランスにて描き奉れ
ためらふな、恥ぢるな
まつすぐにゆけ
汝の貧乏を
一本のガランスにて塗りかくせ ――十二、四、
[やぶちゃん注:恐らく、槐多の詩の中で最も人口に膾炙するものである。さればこそ伏字より何より、二行目の「全集」では〈殺菌〉除去されてしまった最後の読点は復権して記憶されるべきものであると私は信じて疑わない人間である。なお、伏字について、「全集」編者山本太郎氏は、
魔羅をもガランスにて描き奉れ
と推定復元しておられる。
「――十二、四、」底本では下インデント五ミリメートル上げのポイント落ちで配されてあり、「全集」では「うそだらう。」の次行下インデントポイント落ちで、しかも「――十二月四日」と書き換えられてある。]
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