球の躍り 村山槐多
球の躍り
美しい玻璃の球が
絶えまなく轉がる
その色は靑だ。薄紅だ。強い紫だ
金だ。きびしい銀だ
その感じはあでやかであり喜びである
またすがすがしくかなしく狂染みて居る
何とした日であらう
絶えまなくそれらにぶつかり
絶えまなく躍つて居る
俺は躍つて居る
それらの美しい球がまあ一秒一秒の
俺の感情かしら
それならば俺はぶつつかつた
十二時間に四萬三千二百の
すべて達つた色をした玻璃のその球に
[やぶちゃん注:「絶えまなく躍つて居る」「全集」はここを「ゐる」とし、しかし次行の「居る」はママである。一向に理解が出来ない。]