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2015/07/15

深夜の猿   村山槐多

 

  深夜の猿

 

私がめざめた

しつこく女と遊ぶ夢から

そしてがつくりとした

 

窓の外で

冷めたい霧が星をくもらせる

地に霜がしがみつく

かつちりと

 

で、まつくらだ

まつくらな眞の夜中だ

 

ふと、ぎよつとして私が起きた

 

はるか怪しい響がつたはる

霧と霧のはざまから

森の底の

遠い禽獸園から

はるかにきこえる

 

猿が一聲泣いたのだ

鋭どうさびしう

 

がたがたと私は身を顫はせた

深夜のこの一聲が

私の心の聲ときこえて

 

しばしば耳を澄ました

がそれつきりで

夜は深々とふけわたつた。

 

    ×

眞赤な花の咲いた

薔薇の木のとげにさされて

猿が一聲泣いた

その泣聲がとある日きこえた

美しい君の頰から

不思議で耐らぬ

 

    ×

うつくしき眼われを見守る

いつも、いづこにも

動かざる星の如く

消えざる幻の如く

過ぎざる時の如く

 

ああわれその眼のために動けり

をどれりはたらけり

その眼あればこそ

 

うつくしき眼よそなたの眼よ

 

いつも、いづこにも

うつくしき眼わが行なひを見守りて

時に晴れ時にくもる

 

うつくしき眼よ

 

 

[やぶちゃん注:「うつくしき眼よそなたの眼よ」この一行、「全集」では前の連の末尾に続いている。しかし底本を見ると、この前の「その眼あればこそ」の部分三三〇頁が終わって、見開き改頁で左頁の初めに本一行が示されているのであるが、版組を見ると明らかに「その眼あればこそ」の後には有意な行空きがあるとしか読めない。失礼乍ら、彌生書房版「村山槐多全集」はこうした細部の校訂がはっきり言って致命的に杜撰である。]

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