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2015/07/22

夢野久作 定本 獵奇歌 (Ⅴ)

  
 
透明な硝子の探偵が

前に在り うしろにも在り

秋晴れの町

 

月のよさに吾が戀人を

蹴殺せし愚かものあり

貫一といふ

 

[やぶちゃん注:「貫一」云わずもがな、尾崎紅葉の小説「金色夜叉」(読売新聞に明治三〇(一八九七)年一月一日から明治三五(一九〇二)年五月十一日までの実に四年強と云う驚くべき期間に断続して続編形式で連載されたが、紅葉の死によって未完成に終わった。連載当時の久作は満八歳直前(彼の誕生日は明治二二(一八八九)年一月四日)から十三歳、未だ小学生(尋常及び高等)であった)の主人公間(はざま)貫一。因みにウィキ金色夜叉によれば、『文芸評論家北嶋廣敏によれば、主人公・間貫一のモデルは児童文学者の巖谷小波である。彼には芝の高級料亭で働いていた須磨という恋人がいた。が、小波が京都の新聞社に2年間赴任している間に、博文館の大橋新太郎(富山唯継のモデル)に横取りされてしまった。小波は別に結婚する気もなかったのでたいして気にも留めていなかったというが、友人の紅葉が怒って料亭に乗り込み須磨を足蹴にした。熱海の海岸のシーンはそれがヒントになったという』(実は私は今日調べてみるまでこの事実は知らなかった。正直、吃驚した)。]

 

自分より優れた者が

皆死ねばいゝにと思ひ

鏡を見てゐる

 

キリストは馬小屋で生れた

お釋迦樣はブタゴヤで生まれた

と……子供が笑ふ

 

[やぶちゃん注:「ブダゴヤ」云わずもがな乍ら、釈迦、ゴータマ・シッダッタは現在のインドのビハール州ガヤー県ブッダガヤ(仏陀伽邪)で悟ったとされる。]

 

十六吋主砲の

眞向うの大空が

眞赤に眞赤に燃えてしたゝる

 

[やぶちゃん注:「十六吋主砲」口径四〇・六四センチメートルの超弩級の大型戦艦の主砲。具体的には本歌発表の十二年前の大正九(一九二〇)年に完成していた大日本帝国海軍の長門型戦艦一番艦で日本海軍の象徴として親しまれた戦艦「長門」(排水量は基準値三万二千七百五十九トン/後の唱和一一(一九三六)年の改装後は三万九千百三十トン)は竣工当時、世界初且つ最大口径の十六・一インチ(当時日本はメートル法を採用していたため実口径は四十一センチメートルぴったり)主砲(四一式四十五口径四十一糎連装砲)四基を搭載していた(以上はウィキ「長門」(戦艦)に拠った)。]

 

キツト死ぬ

醫師會長の空椅子に

白い新しいカヴアがかゝつた

 

羽子板の羽二重の頰

なつかしむ稚な心に

針をさしてみる

 

腸詰に長い髮毛が交つてゐた

ジツト考へて

喰つてしまつた

 

恐怖劇が

チツトモ怖くなくなつた

一所に見てゐる女が怖くなつた

 

古着屋に

女の着物が並んでゐる

賣つた女の心が並んでゐる

 

今日からは別人だぞと反り返る

それが昨日の俺だつた

馬鹿………………

 

[やぶちゃん注:筑摩版全集を底本とする青空文庫では、三行目のリーダが三点リーダ五字分十六ドットしかない。第一書房版全集は本テクストと同じく六字分十八ドットある。]

 

   (昭和七(一九三二)年三月号『獵奇』・署名「夢野久作」・総表題は「れふきのうた」)

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