綠金の鷄 村山槐多
綠金の鷄
綠のにはとり
重たく歩き
鋭どき瞳こそ
黑くきらめけ
あはれ美しき
うすらあかりの
四月はじめつかたの
山國の高原
歩け歩るけ
重たく歩け
眞紅の連山
藍を帶びてならぷ
なれこそは綠のにはとり
小さきルビイのとさか
精力の錆か
數點の黄金
×
俺は易々としてさう言ひ得るのだ
したい事はしろ
したくない事はするな
此二途を嚴格に扱はなければならぬ
汝の生活はかくして輝やく事が出來る
意志を尊重しろ
末葉の感情をほろぼせ
そしてどんどんと奔流と共に流れろ
あゝ その他に吾道はなかつたのだ
×
したければする
したくなければしない
俺の生活は是だ、是だ
この他に何物があらう
總てを「村山槐多」と云ふ奔流に投げ入れ
俺もたゞそのまゝに進むばかりだ
ぶつかる何物かよ
俺は汝が必ず貴く得がたき物なるを信ず
一九一五年五月の汝は醜劣を極めて居る
汝はおつちよこであり拙なる役者である
あゝだがそれも奔流の一路だつたのだ
忘れ去らう、そして進まう
薔薇色の空は靑色と化し
靑空は夜空となる
不思議な天空の神秘が
俺の生活の中に隱れて居る
俺は強大なる藝術を創造するであらう
すばらしい覺世界を内にするであらう
それはわかり切つた事だ
[やぶちゃん注:「鋭どき」「歩るけ」「輝やく」はママ。]