病める時 村山槐多
病める時
鐵槌にうたれた樣に自分は倒れた
起き上る勇氣もなく自分はのめつてしまつた
身はだるく骨は枯れた
心は沈み絶望はかびの樣にはびこつた、
ああこの時どこにのがれ場所があるのだ
何をたよりに生きて居る事が出來るのだ
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神よ罪を犯したりしわれは
今日の罪を今日許し給へ
明日の新らしき命の爲に
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氣が狂ふ
慾情がこうまで強い物とは知らなかつた
人間の肉の慾が
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プロペラの如くわがリンガム廻轉す
[やぶちゃん注:「こうまで」はママ。老婆心乍ら、「リンガム」は男根。英語では通常はlingam であるが、他にもlinga・lingumなどとも綴るようで、元はサンスクリット語。ヒンドゥー教(特にシバ派に属するリンガヤータ派)で繁栄を表わすシバ神の象徴として崇拝される、男根をかたどった長円型の石を指す。但し、原義はシンボル、象徴の意。]