泣く紫の眼 村山槐多
泣く紫の眼
まばゆきまばゆき眼もとは
たそがれに紫に染まりて
美しき君は泣く爲に泣く
薄薔薇の涙は襟にしづくす
君が前の空には
ほのかに集まる、沈みゆく日光の微塵
薄あかりうるはしく慄へつつ
君が涙の眼にうつる
まばゆきまばゆき君が眼
戀人をいざなうたそがれの霞に
涙に濡れたる派手なる金銀の襟に輝やける
寶玉の角にて顏を切らん子は誰ぞ
美し美し雨に濡れし櫻は
散らず描ける雲となりて
薄ら明りの風景の一點にかかる
華美なる君が泣くほとりの
[やぶちゃん注:「いざなう」はママ。]