唇 村山槐多
唇
美しい多淫なあの女は唇をよせた
花を見せる樣なしなをつくり
唇は唇を睨んだ
私は猿の頰に似て居り
下唇に幽かな金色の染點がついて居た
その染點をそつと嗅いだら
高い煙草のやにだつた
私は一聲泣ひて
この唇をなめた
[やぶちゃん注:「泣ひて」はママ。]
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唇
美しい多淫なあの女は唇をよせた
花を見せる樣なしなをつくり
唇は唇を睨んだ
私は猿の頰に似て居り
下唇に幽かな金色の染點がついて居た
その染點をそつと嗅いだら
高い煙草のやにだつた
私は一聲泣ひて
この唇をなめた
[やぶちゃん注:「泣ひて」はママ。]