雪ふりの夜 村山槐多
雪ふりの夜
紫の雪ふりの打つゞき
美しきその夜の空氣に
わが鐵色の神經は濡れたり
わが思は打沈むなり
紫濃き夜のうちを
しとしとゝ雪はやまず
地は白く濡れはてたり
わが思ひも濡れはてたり
あゝ冷めたきこの雪の夜を
われは過ごさんとする美しきわが友と
氷の如き床の上に
にほやかなるわが友の寢衣すがたほのかに光り十時靜かに鳴る
かなしきかなわれらはねむらんとするなり
[やぶちゃん注:「わが思は打沈むなり」の「思」はママ。「全集」は「思ひ」と送る。また、「全集」は「にほやかなるわが友の寢衣すがたほのかに光り十時靜かに鳴る」を「にほやかなるわが友の寢衣すがたほのかに光り」で改行し、「十時靜かに鳴る」を独立行としているが、これには私は従えない。これは底本通り、「にほやかなるわが友の寢衣すがたほのかに光り十時靜かに鳴る」で一行であるべきである。]