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2015/09/23

初夏   立原道造

     初夏

 

街の地平線に 灰色の雲が ある

私の まはりに 傷つきやすい

何かしら疲れた世界が ただよつて

ゐる 明るく 陽ざしが憩んでゐる

 

そして 一本のポプラの木が

白い壁のまへで 身もだへしてゐる

ああ 西風が吹いてゐる きらきらと

うすい陽ざしがちらついてゐる

 

しかし 屋根ばつかりの 街の

地平線に 灰色の雲が ふえてゆく

 

私を 生んだ 私の母の ちひさい顏を

私は 不意に おもひ出す

 

ああ 陽ざしがかくれる かげが

しづかにひろがる 風がやはり吹いてゐる

 

 

[やぶちゃん注:底本は国立国会図書館近代デジタルライブラリーの昭和二二(一九四七)年角川書店刊立原道造「詩集 優しき歌」の画像を視認した。底本の第二部、堀辰雄らが抄出した初期詩篇二十七篇のかの名篇「草に寢て‥‥」の直前に配されてある。他の後続の選集でも同じように配置されているので、この二つの詩篇の共時性や親和性はすこぶる高いと考えてよいであろう。第一連四行目の「憩んで」は後続の諸本のルビからも「やすんで」と訓じてよいであろう。]

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