日本その日その日 E.S.モース(石川欣一訳) 第二十二章 京都及びその附近に於る陶器さがし 風景スケッチ(その6)
図―683
海岸に沿うた数個所で、農家へ通じる小径の入口に、細い杖の上にさかさまにした大きなきのこをのせた、奇妙な物があるのを見受けた(図683)。きのこの柄は紙につつまれ、また下方の杖にも紙がまきつけてある。これは家族に死人のあることを示すのだと聞いた。私はこんな物は他所で見たことが無いから、これは大和特有なのであろう。何を意味するのかは判らなかった。
[やぶちゃん注:「大和」底本では直下に石川氏の意味不明を示す『〔?〕』が割注で入っているのであるが、私はこれはモースの判断が正しいか正しくないかは分からぬものの、こうした、死穢を広告して人を遠ざけ、伝播を防ぐ風習は大和(奈良)地方特有の習慣なのであろうと考えたとして何ら、不思議でないと言えるが、問題は冒頭で、「海岸に沿うた数個所で」(原文は“At several places along the
coast”で、河岸は通常“the coast”とは言わず、確かにこれは「海岸・沿岸(地方)」である)と言っている点で、こうなるとこれは五条から奈良(大和)へ向かう「紀の川」の流域での嘱目ではなく、和歌山から五条に到るずっと前の、和歌山の和歌浦湾沿岸域での嘱目ということになり、そこは「大和」とは言えないという気はする(それが石川氏の『?』であったのかも知れない)。にしても、このようなものは見たことがない。識者の御教授を乞うものである。]
« 『風俗畫報』臨時増刊「鎌倉江の島名所圖會」 正覺寺 | トップページ | 日本その日その日 E.S.モース(石川欣一訳) 第二十二章 京都及びその附近に於る陶器さがし 風景スケッチ(その7)/朝鮮使節団一行との邂逅 »


