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« 夜に詠める歌   立原道造 | トップページ | のちのおもひに   立原道造 »

2015/09/16

わがまどろみは覺めがちに   立原道造

    わがまどろみは覺(さ)めがちに

      夢のうちに逢ふと見えつる寢覺こそ

      はかなきよりも袖はぬれけれ――新古今和歌集

 

窓に ひとすぢ さしそめた

星の光? 月のかげ?

いいえ いいえ! 夜の明けだ

斷れた 眠り 消えた 薔薇!

 

眠りのない 噴水が よつぴて

さざめいてゐた ひそかな愛の

ささやくやうに 思ひ出のほほゑみが

夢のうちにかへつて來たやうに‥‥

 

おまへだつたのか さうして 薔薇の

内側に 醒めてゐる 靜かな世界を

のこして行つたのは? さうして

噴水を 眠らせなかつたのは?

 

窓に ひとすぢ もうさしそめた?

いいえ いいえ あれはまぼろし!

夜はふかく 病む人の眠りのやうに

ひつそりと 過ぎて行く 暗く暗く

 

夜の明け? 斷れた眠り‥‥

見つめてゐる 光 耳のなかに

晝の鳥らの歌がして もう夜の明け?

いいえ あれは 星のかげ 夜のうた!

 

外の空に 溢れるものは 闇

答へるものもなく 見られずに‥‥

熱くされた悲哀が しづかにかへつて

長く長く 夜が續く――聲もなく!

 

 

[やぶちゃん注:底本は国立国会図書館近代デジタルライブラリーの昭和二二(一九四七)年角川書店刊立原道造「詩集 優しき歌」の画像を視認した。底本の第二部(「Ⅱ」)、堀辰雄らが抄出した初期詩篇二十七篇の、前掲の「夜に詠める歌」とその「反歌」に続いて所収されているものである。

 副題の如く引用されている和歌は、「新古今和歌集」の「卷第十二」の「戀歌二」の大納言実宗(さねむね)の一首である(第一一二七番歌)、

 

  題知らず

 夢のうちに逢(あ)ふと見えつる寢覺(ねざめ)こそ

  はかなきよりも袖はぬれけれ

 

作者の西園寺(藤原)実宗(天養元(一一四四)年~建暦二(一二一三)年)は平安後期鎌倉にかけての公卿で歌人として知られた公卿西園寺公通(きんみち)の子。右近衛(うこんえの)中将・蔵人頭(くろうどのとう)を経て、安元二(一一七六)年に参議に進み、建久二(一一九一)年に大納言、元久二(一二〇五)年には西園寺家初の内大臣となった。正二位。藤原定家は娘婿であった(以上は主に講談社「日本人名大辞典」に拠る)。

 岩波新日本古典文学大系「新古今和歌集」(田中裕・赤瀬信吾校注一九九二年刊)の脚注によれば、これは「古今和歌六帖」「第四」の「戀」に載る凡河内躬恒の、

 

 夢にてもうれしとも見ばうつつにて

  わびしきよりはなほまさりなむ

 

をインスパイアしたものとする。一首は――夢の中で恋しいあの人と逢った――と見た――そこで――ふっと寝覚めた……それは……現実(うつつ)に現にあの人の冷たい眼に逢うよりも、遙かにまた、袖の涙に濡れそぼつことよ――の意であろう。]

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