やがて秋⋯⋯ 立原道造
Ⅱ やがて秋⋯⋯
やがて 秋が 來るだらう
夕ぐれが親しげに僕らにはなしかけ
樹木が老いた人たちの身ぶりのやうに
あらはなかげをくらく夜の方に投げ
すべてが不確かにゆらいでゐる
かへつてしづかなあさい吐息にやうに⋯⋯
(昨日でないばかりに それは明日)と
僕らのおもひは ささやきかはすであらう
――秋が かうして かへつて來た
さうして 秋がまた たたずむ と
ゆるしを乞ふ人のやうに⋯⋯
やがて忘れなかつたことのかたみに
しかし かたみなく 過ぎて行くであらう
秋は⋯⋯さうして⋯⋯ふたたびある夕ぐれに――
[やぶちゃん注:底本は国立国会図書館近代デジタルライブラリーの昭和二二(一九四七)年角川書店刊立原道造「詩集 優しき歌」の当該画像を視認した。生前の既刊詩集「曉と夕の詩」の第三曲。中公文庫「日本の詩歌」第二十四巻脚注によれば、『四季』昭和一二(一九三七)年十月号にローマ数字を外した題で(底本は総てのリーダが二点であるが、初出は不詳乍ら、「やがて秋」の後は一般的な「……」であろうとは思われる)発表されたものを初出とする。
【二〇二六年四月七日:底本変更・修正】本篇の下書きを、本日、電子化する関係上、より正確な底本として、一九七一年角川書店刊「立原道造全集 第一卷 詩集I」(本登録をしないと閲覧出来ない『送信サービスで閲覧可能』である)の当該部で全面修正した。なお、他の前後の「優しき歌」は修正していない箇所が多いのは、お許しあれ。「優しき歌」全篇は膨大であるため、修正が追いつかないためである。悪しからず。]

