橋本多佳子句集「命終」 昭和三十七年(2) 大石忌/他
大石忌
祇園一力にて
燦と燭良雄忌はまた主税忌よ
大石悼む低き鴨居のその低きも
大石忌仮恋とても恋佳きぞ
大石の死の刻春日この位置に
[やぶちゃん注:「大石忌」赤穂浪士四十七士の大石良雄(万治二(一六五九)年~元禄一六(一七〇三)年)とその嫡男良(よし)金(かね)(元禄元(一六八八)年~元禄十六年:通称、主税(ちから))の忌日は旧暦二月四日(新暦一七〇三年三月二十日相当)である。主税は享年十六歳、無論、浪士中、最年少であった。底本年譜の昭和三七(一九六二)年の条に、『三月二十日、大石忌に誓子と京都「一力」に赴く』とある。「祇園一力」大石内蔵助が幕府や吉良を欺くために豪遊したとされる花見小路の角にある茶屋。現存する。個人サイト「中之島のBOW」内の「祇園一力亭」をご覧あれ。私は生涯、行くこともありますまい。]
花子さん
老の妓の笛座ゆづらず大石忌
[やぶちゃん注:「花子」不詳乍ら、祇園の老妓の名と思しい。]
*
投げ独楽の遠くにまはる吾と遊び
親よりも頭勝ちむつくり巣立鳥
泉の円一方切つて流れ出す
鈍男野焼きしことに勇みをり
[やぶちゃん注:「にぶをとこ」と読むか? 差別的な意識が働いている句の如く読めて、私は不快である。]
*
紅椿直哉が捨てし涸れ筧
[やぶちゃん注:「直哉」は志賀直哉か? 孰れにせよ、意味不詳。識者の御教授を乞うものである。]
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