孤獨の日の眞晝 立原道造
孤獨の日の眞晝
濡れた草場にかくれて
僕の くりかへした
さまざまの 窮屈(きゆうくつ)な姿勢は
何とみじめにこころよかつたことか
誰からも見られてゐない確信と
やがて 悔(く)いへの誘ひと――
その時 眞晝が
匂ふやうであつた
太陽は甘く媚(こ)び
戰(そよ)ぎはいつしか絶え……
小鳥の唄だけ 遠く囁(ささや)いてゐた
ああ 聖(きよ)らかな
逃れ去り行く 繫がれてあるこの一刻
この欲情のただしさを
[やぶちゃん注:底本は昭和六一(一九八六)年改版三十版角川文庫刊中村真一郎編「立原道造詩集」を用いた。]