窓下樂 立原道造
窓下樂(さうかがく)
昨夜(ゆふべ)は 夜更(ふ)けて
步いて 町をさまよつたが
ひとつの窓はとぢられて
あかりは僕からとほかつた
いいや! あかりは僕のそばにゐた
ひとつの窓はとぢられて
かすかな寢息(ねいき)が眠つてゐた
とほい やさしい唄のやう!
こつそりまねてその唄を僕はうたつた
それはたいへんまづかつた
昔の こはれた笛のやう!
僕はあわてて逃げて行つた
あれはたしかにわるかつた
あかりは消えた どこへやら?
[やぶちゃん注:底本は昭和六一(一九八六)年改版三十版角川文庫刊中村真一郎編「立原道造詩集」を用いた。【二〇二六年五月四日追記】恣意的にした正字化が不全であったので、修正した。]
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