靜物 立原道造
靜物
堡壘(ほるゐ)のある村はづれで
廣い木の葉が搖れてゐる
曇つた空に 道は乾き
曲ると森にかくれた 森には
いりくんだ枝のかげが煙のやうだ
雲が流れ 雲が切れる
かがやいてとほい樹に風が移る
僕はひとり 森の間から
まるい石井戶に水汲む人が見えてゐる
村から鷄が鳴いてゐる ああ一刻 夢のやうだ
[やぶちゃん注:底本は昭和五三(一九七八)年再版中公文庫刊「日本の詩歌」第二十四の立原道造のパートを用いたが、恣意的に漢字を正字化してある。底本の脚注によれば、昭和一〇(一九三五)年の『四季』四月号に発表されたとあり、前掲の「燕の歌」の同一誌の翌月号投稿となる。]
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