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2015/10/06

枯木と風の歌   立原道造

 

  枯木と風の歌 

 

私はうそをつき芝居をする

自分をゆるしたすべてのお前に

私は默つて立つてゐる

ちやうどおこつた子供のやうに 

 

枝は何と邪魔(じやま)なのだらう

うつかりするとそれは裏切る

私はにくしみの言葉を捨てて

風にささやきかける 

 

あれは祈りだ 誘(さそ)ふ者に

そしてしづかにもう一度

水に映つたかげを眺める

いつまでも搖れないやうに

 

   *

 

私がそんなに驅けるときに

お前はなんと悲しさうなのだ

お前はぢつと殘つて 啞のやうに

たゞ身を搖るばかりなのだ

―― ―― ―― ―― ―― 

 

私はもう次の木に行かう

それがお前にそつくりだつたら

私は身を投げる 光りながら搖れるものに

ここには扉もなく 姿もない

しづかに暗がりがのこりはじめる 

 

[やぶちゃん注:【二〇二六年三月六日改稿】元は、底本として昭和六一(一九八六)年改版三十版角川文庫刊中村真一郎編「立原道造詩集」を用いたのだが、今回、立原道造の前期の草稿詩篇を電子化注している中で、この中村氏が拠ったものが、角川書店の旧全集(ここ〈一九五七年版〉/先行版はここ〈一九五〇年版〉)を底本にしたもので、そこでは、この第四聯の最終行が「 …… …… ……」になっていたのであるが、後の新全集(一九七一年刊)を見たところ、当該部(ここ)は以上のように、「―― ―― ―― ―― ――」になっていることを発見した。されば、そこを修正し、中村氏がルビを振った部分四箇所もカットし、さらに、Unicode導入以前の仕事であるので、正字不全があったのも修正した。

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