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2015/10/02

失なはれた夜に   立原道造

  Ⅵ 失なはれた夜に

 

灼けた瞳が 灼けてゐた

靑い眸でも 茶色の瞳でも

なかつた きらきらしては

僕の心を つきさした

 

泣かさうとでもいふやうに

しかし 泣かしはしなかつた

きらきら 僕を撫でてゐた

甘つたれた僕の心を嘗めてゐた

 

灼けた瞳は 動かなかつた

靑い眸でも 茶色の瞳でも

あるかのやうに いつまでも

 

灼けた瞳は しづかであつた!

太陽や香のいい草のことなど忘れてしまひ

ただかなしげに きらきら きらきら 灼けてゐた

 

 

[やぶちゃん注:底本は国立国会図書館近代デジタルライブラリーの昭和二二(一九四七)年角川書店刊立原道造「詩集 優しき歌」の画像を視認した。生前の既刊詩集「曉と夕の詩」の第六曲。新潮文庫中村真一郎編「立原道造詩集」の注解及び中公文庫「日本の詩歌」第二十四巻脚注により、初出は昭和一一(一九三六)年六月号『四季』(第十八号)で、その際の詩題は、無論、ナンバーなしで、

 

   或る不思議なよろこびに

 

であった、とある。]

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