花やかな あかるい娘たちよ 立原道造
花やかな あかるい娘たちよ
花やかな あかるい娘たちよ
おまへたちの泡立つ言葉を
私の胸の上に やすましめよ
ちひさな蕾(つぼみ)のやうにこぼれるために
私のために ひびきはしない その音よ
しかし 私のために ほんのしばらく
この胸の上にしづまれよ
頰の涙のかわき去るのをとめようと
時は 何もかも 削(けづ)つてしまふ
いつかは! ほんたうに忘れるだらう 人は
おまへたちのゐたことも おまへたちの言葉も
そして そのとき きらきらする 眠るまへの
あかりのそばで 私は それらを溶かすであらう
夢のうちに 夢よりもたよりなく
[やぶちゃん注:この詩篇の底本は昭和四三(一九六八)年新潮社刊「日本詩人全集」第二十八巻の「立原道造」(中村真一郎編)を用いた。]
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