橋本多佳子 生前句集及び遺稿句集「命終」未収録作品(17) 昭和十七(一九四二)年 五句
昭和十七(一九四二)年
寢がへりし足のつめたさ五位が啼く
[やぶちゃん注:「五位」五位鷺。コウノトリ目サギ科サギ亜科ゴイサギ Nycticorax nycticorax。]
笹鳴やひと去りし爐にわれもどる
信濃二句
湖みればしなのの櫻散るなりけり
旅の家にかたくりの花昏れんとする
木曽
おだまきや子を負ふ子等と吾遊ぶ
[やぶちゃん注:「おだまき」苧環。これは実際の山野草のモクレン亜綱キンポウゲ目キンポウゲ科オダマキ属 Aquilegia のヤマオダマキ(山苧環)Aquilegia
buergeriana 或いはミヤマオダマキ(深山苧環)Aquilegia
flabellata var. pumila であろう。苧環とは本来は機織りの際に苧(カラムシ)や麻(アサ)の糸をまいた紡錘形のものを指し、それが本種の可愛いらしい花の形に似ていることに由来する。
以上、『馬醉木』掲載分。多佳子、四十三歳。]
« 橋本多佳子 生前句集及び遺稿句集「命終」未収録作品(16) 昭和十六(一九四一)年 十五句 | トップページ | 橋本多佳子 生前句集及び遺稿句集「命終」未収録作品(18) 昭和十八(一九四三)年 九句 »