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2015/11/14

老いたるえびのうた   室生犀星

 
  老いたるえびのうた
 
けふはえびのように悲しい
角(つの)やらひげやら
とげやら一杯生(は)やしてゐるが
どれが悲しがつてゐるのか判(わか)らない。
 
ひげにたづねて見れば
おれではないといふ。
尖(とが)つたとげに聞いて見たら
わしでもないといふ。
それでは一體誰が悲しがつてゐるのか
誰に聞いてみても
さつぱり判らない。
 
生きてたたみを這(は)うてゐるえせえび一疋(ぴき)。
からだじうが悲しいのだ。
 
 
昭和42(1967)年新潮社刊「日本詩人全集15 室生犀星」を底本としたが、恣意的に正字化した(事実上は「体」→「體」のみ)。犀星の遺作。底本の福永武彦の解説によれば昭和37(1962)年2月25日に書かれたもので、この一週間後に病態が悪化、翌3月16日に肺癌により永眠した後の、同年4月号『婦人の友』に掲載された最後の作品とあり、『字遣いは原稿通りに組んである。原稿では第六行に「い」が二字重なり、感慨なしに眺めることは出来ない』とある。

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