あそび 北原白秋
あ そ び
憂き我をさびしがらせよ閑古鳥 芭 蕉
一
あそびこそ尊とかりけれ。
まことよく恍(ほ)れあそぶもの
神ぞただ嘉(よみ)したまはむ。
まことにはあそぶ人なき。
二
身をあげてあそぶ童(わらべ)は
ひたむきに天(あめ)もわすれぬ、
聲あげて恍(ほ)れてあそびぬ。
その聲ぞ神のものなる。
三
いと高きこころにあそぶ、
そのどよみ天(あめ)にいたらむ。
あそびこそ尊とかりけれ、
よく遊べ、みほとけのごと。
四
かうかうと遊ぶこころを
まことには知る人ぞなき。
童(わらべ)のみ神のものなる。
神こそは童(わらべ)なるらめ。
五
御佛のとはのあそびは
ほとほとに盡くる期(ご)ぞなき。
さるからにかなしかるらむ、
ほとほとに堪へもかぬらむ。
六
せめてただ、さみしく、高く、
われはただ遊びほけてむ。
遊びほけ、遊びわすれむ、
涅槃(ニルワナ)のその眞澄(ますみ)まで。
*
「水墨集」より。底本は昭和25(1950)年刊新潮文庫「北原白秋詩集」。