「笈の小文」の旅シンクロニティ――磨ぎ直す鏡も淸し雪の花 芭蕉
本日 2015年12月28日
貞享4年11月24日
はグレゴリオ暦で
1687年12月28日
熱田御(み)修覆
磨ぎ直(なほ)す鏡も淸し雪の花
「笈の小文」より。平凡ではあるが、祝祭句というものはそれでこそよいと私は思う。熱田神宮のこの時の修復は前年の貞享三年で、芭蕉はこの三年前の貞享元年にも「野ざらし紀行」の旅で熱田を参拝しているが、その時は荒廃の限りを尽くしており、同書では、
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熱田に詣づ
社頭大いに破れ、築地(ついぢ)はたふれて草むらにか隱る。かしこに繩を張りて小社の跡をしるし、ここに石を据ゑえて其神と名乘る。よもぎ、しのぶ、心のままに生(お)たるぞ、なかなかにめでたきよりも心とどまりける。
しのぶさへ枯て餠(もち)かふやどりかな
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詠歎している。かく二句を並列して味わうと、芭蕉の視線が読む者に神妙にシンクロしてくるではないか。
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