日本その日その日 E.S.モース(石川欣一訳) 第二十五章 東京に関する覚書(24)
先夜私は、屋敷の召使いの子供である小さな女の子を二人連れて、お祭が行われつつある本郷通を歩いた。私は彼等に、銅貨で十銭ずつやった。どんな風にそれを使うかに興味を持ったのである。それは我国で、同様な場合、子供に一ドルをバラ銭でやったのと同じ様であった。子供達は、簪を売る店に、一軒一軒立ち寄り、一本五厘の品を一つか二つしか買わぬのに、あらゆる品を調べた。地面に坐って、悲しげに三味線を弾いている貧しい女――即ち乞食――の前にさしかかると、子供達は、私が何もいわぬのに、それぞれ一銭ずつを彼女の笊(ざる)に落し入れた。
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