「笈の小文」の旅シンクロニティ――箱根こす人も有るらし今朝の雪 芭蕉
本日 2016年 1月 6日
貞享4年12月 4日
はグレゴリオ暦で
1688年 1月 6日
箱根こす人も有るらし今朝の雪
「笈の小文」に、先に示した「ためつけて雪見にまかる紙子哉」「いざ行かむ雪見にころぶ處まで」により前に、
蓬左(ほうさ)の人人に迎へとられて、暫く休足(きうそく)するほど、
箱根こす人も有るらし今朝の雪
と出るが、山本健吉「芭蕉全発句」は『十二月四日、名古屋での作』と断定しており、サイト「俳諧」の「笈の小文」でも同日の聴雪(ちょうせつ)亭(別に風月亭とある箇所は誤記かと思われる)での六吟歌仙の発句とある。同サイトによれば、脇は以下である(脇付している亭主「聽雪」というのは美濃屋のいう屋号以外は不詳の人物)。
箱根越す人もあるらし今朝の雪 芭蕉
舟に燒火(たきび)を入るゝ松の葉 聽雪
「笈の小文」本文の「蓬左」は熱田神宮の別称である「蓬莱宮(ほうらいきゅう)」の「左」(西)方地域一帯の呼称。現在の熱田・名古屋一帯の広域呼称と考えてよい。
一句は、この寒雪の風狂の途次、かくも暖かき一席を設えて呉れた亭主美濃屋聴雪への挨拶の意を表する。